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17. 雨夜

2007年01月07日 01:17

何よりも僕は、彼女の洞察力と分析力に感心している。
カウンターでの遣り取りも後で知ったが、しっかり見られていたようだ。
話した内容は教えられないが、大方彼女なら予想しているだろう。

「Snafu Bar」を出て礼を言い、傘を渡して地下鉄の駅に向かおうとした。
数歩離れた僕の背中に、彼女はもう少し話を聞かせて欲しいと声を掛けた。
もし気にしないのなら自分のアパートで、と。
躊躇する僕を、彼女は引き摺っていく。
行動力と言おうか、決断力も見事なものだ。
途中、ベッドルームには近づかないと約束はしておいた。

酒は十分だったがデリで、また大量にビールを補給し彼女のアパートに向かう。
小さな折り畳み傘だけの僕らは、どちらも半身が濡れて寒かった。
僕は「ちょっとごめん」と言い彼女の肩を引き寄せると、
抱えるようにアパートまで走った。
驚いたままの彼女をアパートの玄関ホールまで連れて行くと、
彼女は息を弾ませて笑った。
僕も目を合わせずに笑う。
胸が苦しいのは、きっと走ったせい。
もう深くは考えないことにしよう。

古民家風の調度品で纏められたシンプルな部屋、
ダイニングテーブルで再度グラスを合わせる。

朝方まで彼女とビールと共に、静かな中で話す事ができた。
仕事の事は実は僅かで映画や音楽、日本とアメリカ、酒や食事etc…
何時間話したのだろう。
彼女の部屋の窓からは晴れ渡り、澄み切った空が見える。

心配したような事は僕ら2人に、何も起きなはしなかった。
(期待していたと思われる向きもあるだろうが…)
でも僕は、間違いなく彼女を誘惑したんだと思う、日本での仕事を餌に。
自分の仕事に嫌気が差し、日本に帰るのも嫌になってきた。
しかも二日酔い…

仕事前にシャワーを浴びなければ。
僕は一人、グランド・セントラルへ向かう。
彼女は今日一日、会う事はできないだろう。

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16. 告白

2006年12月27日 00:49

カウンターで日本酒と板前さんとの会話で楽しみ、
そこを出たのはまだ22時前。
雨はだいぶ強くなっている。
余韻が覚めないうちに、もう一軒だとはしゃぐカオリ。
彼女は酒にかなり強いようだ。
そろそろ財布の中身に不安を感じていたところ、
次は出させてと「Snafu Bar」へ案内する。

平日だというのに、行き付けは身動きできない程の盛況ぶり。
カウンターの女性店員は、僕に連れがいるのを見てびっくりしているようだ。
毎日のように一人で店を訪れる。
顔なじみになった僕は、この店員とよく会話するようになっていた。
ビールを2つ受け取ると同時に彼女は、顔を寄せ僕にだけ聞こえるように、
「Good luck, honey!」とブルーの目でウィンクしてみせる。
僕はアルコールの影響以上に赤くなってたかもしれない。
カオリは他に興味を向けていて、
慌てて否定する姿は見られずに済んだと思った。
よくウィンクされる夜だ…

1時間もすると店内は客も少なくなり、奥にある無縁だと思っていた、
あの暖炉前の赤いソファに腰を下ろす事ができた。
カオリはクッションに身体を預け、大きく伸びをする。
僕はテーブル上のキャンドルに向かって、
色気のない事をようやく話し始めた。
怒鳴りあうように会話していたトーンからは大分声を落として、
目的、仕事の事、カオリに興味を持っている事等をゆっくりと。
そして一番躊躇していた、彼女の人間性に踏み込む事を。

がっかりさせるのではないかという憂いは、
どちらに転んだのだろう。
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15. 追随

2006年12月20日 02:35

まだ雨脚は強くなく、殆ど濡れずにグランド・セントラルに着いた。
彼女は傘を持っていない。

時間が早いせいか、それほど席も埋まっていない店内。
赤と白のチェック柄の派手なテーブルクロス、照明は明る過ぎない適度の暖色系。
想像通りのアメリカンダイナーだ。

奥側端の席に案内されると、そのエリアを担当するウェイターに、
取り合えず乾杯したい旨を伝えてビールだけオーダーする。
彼はカオリに向き直り、決まったら呼んでくれとウィンクして彼女の側を離れた。

その後も彼女の方しか見ないウェイターは、
オススメの牡蛎を数種類をチョイスしてもらうオーダーに、
「君の為に選んだよ。」と、僕の存在がないかのように去っていく。
数瞬経ってお互いに顔を見合わせ、声を出して笑う。
彼のお陰で緊張がほぐれていた。

追加した牡蛎とメインプレート、カリフォルニア産のシャルドネを2本空け、
プライベートな事までずっと話をした。
(Jumbo Shrimp Salad with Sauce Piquante and Julienne of Leeks. =
長ったらしいけど、特大エビの辛味ソース・ポロ葱の千切り添えって感じ。
牡蛎はオレゴン産のKumamotoって言う品種が気に入った)

僕はつまらなくさせるのを恐れ、肝心な事をまだ言い出せなかった。

2時間程の食事を終えチェックを済ませると、先程のウェイターは僕に、
カオリには分からないよう意味ありげなウィンクをして見せた。
がんばれよ、そういう事なのだろうか。
彼に笑顔で礼を言う。
店の外には行列ができている。

まだ20時前だ…
もう一軒行こうという僕の誘いに、当然という風に前を歩いていく彼女。
僕は傘を持って後を追う。
少し歩き、41stの「ちよだ鮨」に落ち着いた。

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14. 提案

2006年12月07日 23:50

その日は、今にも泣き出しそうな空。
帰国する5日前。
何の事はない、あっという間に過ぎた時間だったな。

いつものように、なるべく時差を意識しない時間帯に日本と連絡を取り、
評価報告書なんかを作っている。
昼前、前日旅行から帰ったというカオリが、スターバックスを2つ持って現れた。
「ただいま。仕事、捗ってる?」
ディスプレイの隙間から、僕は唸って進捗を伝えた。
移動時間が長かった割に、疲れた感じは見えない。
僕の近くにイスを引き寄せ、天気も良くてロケーションは最高だったと、
色んな事を楽しそうに話してくれた。
見ておきたかったな、ナイアガラ…

そろそろ残された時間もなくなってきた。
彼女なら話は早いはずだとタイミングを考えていたところに、
「今日もきっと飲んで寝るだけでしょ?まだビールの約束は有効ですよ。」
彼女から食事に行く事を提案される。
飲んで寝るだけ、まったくその通りだし、約束の事も僕の方が忘れていた。
なぜかまた脈拍が速くなるのを感じて、間の抜けた返事で承諾する。
見透かされている気分。
視線を外す為に見た窓の外は、とうとう雨が降り出していた。

僕は、一度は行っておきたいと思っていた「Oyster Bar」を推した。
オフィスからも程近い、グランド・セントラルの地下にある。
彼女も行ってみたかったと喜んでくれて、何故か僕はほっとしている。
僕の主要目的がもう一つ、消化できる訳だ。
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おい、これは仕事だからな…
不意に自分に言い聞かせていた。
何だったか、僕が加害者だとすればリマ症候群?
そんな大げさで特殊な環境下ではないかもしれないが、
何にせよ、僕は彼女に惹かれているのかもしれないから。

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13. 目的

2006年12月03日 23:25

9.11の前週、講義は一通り終了していた。
残りの滞在期間、試験対策と日常業務だけをこなす日々になる。
あと一週間しかない。
なんの成果も残せてないが、不思議と焦りは感じていなかった。

カオリは講義の最終日、ナイアガラ・フォールズに出発する前日、
目を覗き込んで僕に聞いた。
彼女の顔が近い。
「ここに来たのは、講義を受けるためだけじゃないんでしょう。
別に必要なさそうだし。何?」
いたずらの企みを見つけようとしてるようだ。
半歩後退り僕はドキドキしながら、帰ったら時間を作りましょう、とだけ答えた。
余計に何かあるという行動を取ってしまった僕は、子供のようだ。
それでも納得したような表情を見せ「そうね…」、
彼女はさらりとコーヒーマグを僕に手渡した。
女性はやはり鋭い…

今更ながらに明かすと、僕の本来の目的は人的リソースの確保だった。
研修にしても人材確保にしても当初は、
わざわざニューヨークまで来てやる意味があるのか甚だ疑問だったのだが、
認識を翻し、もっと意味のある時間にしたいという欲求が僕の中にあった。
彼女はこの地での僕の希望だった。
隠す事ではないが、このオフィス内で話す事ではないし、立ち話で済ます気もない。
そんな彼女の目的は、"修業"だといつか言ってた事を思い出した。

暫く、米国人の異性と別れの挨拶にハグやキスはできるか、なんて事で談笑していた。
まだ少し、脈拍が速いような気する。
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(頂き物のナイアガラ画像です)

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